張り詰めた空気の中、千晃は食事どころではなかった。自分の両親と食事をするのすら遥か昔のこと。ましてや無言のまま匡祐の両親も食事しているが、匡祐の義理の母は匡祐を見ようともせず、明らかに不機嫌だった。
形式だけのあいさつを済ませると二人の父どうしで今後のスケジュールを淡々と話し、その後からは始終無言だった。
固形物を飲み込めないほどの緊張感に、千晃はひたすら水を飲んでいた。

「匡祐」
「はい」
その沈黙を破ったのは匡祐の父だった。
「力の施設に行くのはもうやめなさい」
その言葉に匡祐がすぐに答える。
「いやです」
匡祐の返事に匡祐の父が鋭いまなざしを向ける。
「なら、力を別の施設に移すまでだ。」
「なぜですか?」
匡祐は父に食いつく。
「力に使う時間があるのなら仕事をしなさい」
「仕事は仕事でやっています。ご心配なく。自分で支障のないようにやりくりします。」