喉の奥がカラカラになり鼻がツンと痛くなる。


思わず両手で口を覆った。


涙が溢れそう、そしたらもう止められない。


彼には全てわかっていた。


わかった上でここに連れてきてくれた。


ただ私の笑顔をとりもどしたいという理由だけで。


「我慢しなくていい、俺が全部受け止めるから。だからつむぎが今思ってること吐き出せよ」


「イオくん、ごめんね」


「謝らなくていいんだよ」


彼はそっと私の手を握ると両手で暖かく包んでくれた。


「私、薔薇の花を見ていたら、お屋敷のことを思い出した。


お庭の薔薇園を思い出した。


家族のことを思い出した。


イオくんの両親のことを思い出した」


残してきた大切な人達。