「そんなこと」


あんまり褒めてくれたのが照れくさくて、また薔薇に視線をうつすと彼に肩を抱かれた。


「今日の俺はかなり薔薇に詳しい、なんだって聞いてくれ」


いたらずっぽい表情を近くで見たら胸がぴょんって跳ね上がる。


でも、かなり薔薇に詳しいって、そう言えば確かに彼はさっきから薔薇の名前を簡単に言い当ててる。


「すごーい、イオくん。薔薇に詳しいんだね」


「ああ、昨夜パソコンで調べてだいたい覚えた」


彼は人差し指でトントンと自分のこめかみを指差した。


その誇らしげなしぐさに、また笑みがこぼれた。


「あのピンクのはビバリー、その隣はシェエラザード、あっちのオレンジは、かおりかざり、あのクリムゾンレッドのは、はいから」


彼は私にひとつひとつ薔薇の名前を教えてくれる。