伊織さまと私のことで傷ついた人がいたとすれば申し訳ないから。


伊織さまがネクタイをはずしたので受け取ろうとしたら、怪訝な顔をされる。


「つむぎは今夜は自分の部屋で寝るか、実家に帰れよ。俺は今から今日の分の勉強を遅くまでやらなきゃいけないから」


「あ、そうなんですか。大変ですね」


そうか、用事で帰りが遅くても勉強は休めないんだな。


だから、彼は疲れたような顔をして眠そうにしているのかもしれない。


決められた勉強を欠かさずやるのも、新海家を継ぐ彼の大切な役目なんだろうな。


「それと、もういいから。出ていけば」


なぜか彼は気まずそうな顔をしている。


「え?」


「着替えたいんだけど」


「あ、お手伝いします」


御曹司の彼はきっといつも1人では着替えなんてしないんだろうなと思ったんだけど。


南さんとかに手伝わせるのかな、なんて思ってた。


「いや、むしろ1人で着替えたい」