気になってはいたけど、私の立場上はなんにも出来なかったんだ。


「うん、思ったよりもずっと話せる方で近々、父親にも会わせてもらえてその上とりなしてもくれるそうなんだ」


嬉しそうにニコッと笑う彼に私も微笑み返す。


「そっか、よかったです。ユリナさまがいいかたで」


「ああそうだな、思いがけず話も合って、あんな令嬢もいるんだなって思ったよ」


彼のジャケットを受け取った私はクローゼットにかけに行く。


「じゃあユリナさま、元気になられたんですね?」


「案外平気そうだったよ」


「そんなものなんですか?伊織さまとの結婚を楽しみにしてたって聞いてましたけど」


「もともとたいして話したことすらなかったし、向こうだって俺に執着があるわけじゃないよ」


なんだ、そうだったのか。


それを聞いてホッとした。