「なんだ、南。早く行けよ」


どうしよー、こんな場面を見たら変な風に思われちゃいそう。


「は。やはりそちらが終わってからで大丈夫ですのでごゆっくり」


「ああ」


伊織さまの冷静な返事がしてから、扉が閉まるまでほんの数秒だったけど、私には何時間にも感じた。


「つむぎ、もう顔を上げろよ」


「は、はい。ごめんなさい。ごめんなさい」 


慌てて謝ったけど恥ずかしすぎて死にそう。


「いや、いいけど」


「・・・」


「南のあの顔、傑作だったぞ」


思いだしたように肩を揺らし笑う彼。


「ええっ、どうしよ」


顔に手をあてたら火がついたように熱い。


「大丈夫だろ、夫婦なんだし。なにも悪いことなんてしてないんだから」


「は、はあ。そうですかね」


でもあの体制はいくらなんでも、普通じゃ無いよね。