「人にはそれぞれ役割があり、分というものがある。
それを踏み外して不幸になる人間を父さんはたくさん見てきた。
新海家の歴史にかつて同じようなケースは何度となくあったが、切り捨てられて泣くのはいつも女性ばかりだ。
父さんはつむぎにはそんな思いはして欲しく無いんだ」


父の言ってる意味は頭では理解できる。


別に私だって、シンデレラストーリーを夢見ていたわけじゃない。


だけど、ここまで現実を突きつけられたら。


「うん」


素直にうなずくことしかできなかった。


「父さんの言いたいことをわかってくれたか?」


「うん、私、初めから伊織さまの奥さんになれるなんて思ってない、ただ」


知りたかっただけなの。


彼の気持ちが本物なのかそうじゃないのか。


「伊織さまは私のことをちゃんと好きなのかな」


頬が熱いのがわかる。