「あ、いえそんな気にしないで下さい」


彼の言う通り立場は少し微妙だ。だけど私は一体どちらの味方をしたいんだろう。


私の気持ちは父と伊織さま、どちらへ向いているの?


昨日彼にプロポーズされたその瞬間から私の運命は大きく動いた。


そして知らなかった未知の世界へ足を踏み入れたように夢見心地だった。


彼に流されるままに、結婚したけれどこの先私は本当はどうしたいんだろう。


「やはり、性急にことを進めすぎたかな。もっとみんなの気持ちが追いつくまで待たなきゃいけなかったのにな」


力なく呟く彼はさっきのことをまだ気に病んでいるみたいだ。


昨日父の留守中に勝手に籍を入れたことを反省しているのかな。


だけど、あの時ああでもしなければ縁談を断れなかったのかもしれないし。