拝啓
室井遥(むろいはる)

冬の肌寒さも残る春になりました。
遥はいかがお過ごしですか?
(ゆず)は、遥に会いたいなぁって思ってるよ。
遥はそう思わないの?
急にいなくなるなんてひどい、一言ぐらい言ってよ。
ねぇ、遥。
もう、、あえないの?

「だぁぁあ!だめだだめだ!なしなしなし!
こんなんで、優勝できるかって、、!」
そう言って私は、パソコンに打ち込んでいた文字を消した。
「むぅぅ〜」
机の上に貼ってある紙を睨みながら唸り声を上げた。
”目が腫れるまで泣かしてやる小説コンクール”
「ネーミングセンスひっどいなぁ」
夏休みの今。うちはコンクールに応募するためパソコンとにらめっこをしてる。
やっぱり、初めて書くもんなぁ。
興味本位で書いてもだめだよな。
「よし!やるかー!」

室井遥と出会ったのは、高一の頃の合コンだった。

「ゆずぅー!」
「ん?どうしたの?秋穂(あきほ)」
ぎゅーっと後ろから抱きついてきた友達に笑いかけながら聞いた。
「あのね!今日ひま?」
「暇だけどどうしたの?」
「合コン行かない!?」
「へ?ご、合コン?」
少女漫画の世界だけだと思っていた単語が飛び出してきて、変な声が出た。
「柚でセッティング完了!」
「秋穂!うち行くなんて一言も、、!」
「暇なんでしょ?なら行くしかないじゃん!」
「なにそれぇぇえー!」


はぁぁ、、
「柚!そんな緊張しなくても大丈夫よー!」
だって!だって!初めてなんだもん!
緊張くらいするじゃん!?それもカラオケよ!
「みんなうちの友達だしいい人ばっかだからね?」
「だ、大丈夫!」
まぁ、もう高校生だし彼氏の1人や2人くらいは作らないとね!
「がんばろ、」

自己紹介が終わり皆は色んな人と話し始めた。
うちも誰かと話さないと…。
「あ!柚ちゃんやんな!?」
「はい!えっと、冬真(とうま)くんよね!」
「そうそう!なな!柚ちゃんって天音(あまね)さんすきなん!?」
「うん!好き!」
天音さんとは、ネットで活動してる歌い手さんのことだ。
「ほんまに!?俺もめっちゃ好きなんよ!」
「そうなの!?」