「やっぱり気が変わったって言われても、もう遅いからな」

 織は言うや否や力強く身体を引き寄せ、私の顎に手を添える。
 私は仄暗い路地で、織しか見えなかった。

「……言わない。ちゃんと考えたから」

 胸が鳴り続ける。これまでなんて関係ないってわかったのは、ついさっきのこと。
 だって今はもう、織に触れられて心がきゅっと甘くしめつけられる。

「織としたいって思ったの」

 勇気を出して伝えた途端、くるっと壁側に移動させられた。その直後、人目から隠すように私を覆い隠し、瞬く間に唇を奪う。

 力強いキスに酸欠になるかと思ったら、タイミングよく織の唇が離れていく。

 息ができる安堵と、ほんの少し物足りなさを抱き、ゆっくりと瞼を上げていく。

 視線の先には、想像もできなかった表情をする織がいて驚愕する。

「やばいな……。このまま俺、抑えきかなくなりそう」

 我慢と高揚が入り混じったような切迫した雰囲気に、こっちまで脈拍が速くなる。

 気づけば、再び私たちの距離はなくなっていた。

『抑えがきかなくなる』と漏らした通り、織は一度目よりももっと激しく私を求める。

 私はそれに応える余裕なんて持ち合わせてなくて、ただ織に与えられる快感にすべてをゆだねた。

 どのくらい繰り返されていたかわからない。
 それにもかかわらず、織は名残惜しそうに私の下唇を食み、口元でささやいた。

「俺はもう絶対に麻結を離さないから」

 艶のある声にまた胸が震え、私はしばらく足に力が入らず、ぼんやりとした意識で織の胸に寄りかかっていた。