驚愕させられる発言ではあったけれど、私はそのまま織の腕の中に留まり、微かにうなずいた。

「うん。いいよ」
「えっ」

 今度は織が衝撃を受けたみたいで、目を見開く。

 私はさすがに羞恥に耐えられなくなり、俯きながら言う。

「もう、自分の気持ち……わかったから」

 井野さんには申し訳ないと思っているけれど、さっき無理やりキスされそうになったときにはっきりわかった。

 キスをするなら、織と――。

 私はあのとき、無意識にそう考えた。

 告白をするって、こんなにドキドキするものなんだ。

 緊張しすぎで心臓が口から飛び出しそう。
 うまく立っていられる自信がなくなるほど、全身の感覚が変になる。

 織の顔を見られない。
 手のやり場も困るし、呼吸の仕方もわからなくなる。

 そのとき、織が私をビルの影に引き込んだ。

 無意識に織を見上げると、熱情に満ちた瞳に一瞬で囚われる。