しかし、大喜びしたのも束の間、私はエリアマネージャーになってまだ経験も浅いほうで、現在抱えている仕事の成績も芳しくない。
 さらに、先方からはメンズもののみ承諾をもらったということもあって、結局私は今や蚊帳の外。

 それでも、願っていた企画がもうすぐ現実になるのだから、わがまま言っちゃいけない。

「私、デザイナーにはなれなくても、企画ならいけるかもって思ったときから、できる努力は惜しまないって決めてるんです」

 今回できないことも、いつか叶うかもしれない。
 もしも叶わなくても、また別の道を探せばいい。

 だって、私はそうやってここまで来たんだ。

 井野さんは優しい顔つきで私を見て、「そっか」とつぶやいた。直後、なにか閃いたように口を開く。

「あ、そうだ。今日、時間見つけて新店舗見に来たら? まだ見てないだろ。モチベ上がって疲れも吹っ飛ぶんじゃない? 俺、六時くらいから(やかた)が閉まる時間までいる予定だからさ」
「え! いいんですか?」
「もちろん」
「そうと決まれば、今日一日、俄然やる気出てきました」

 私がガッツポーズをして言うと、井野さんは笑った。

「はは。本当、単純なやつだな」

 私たちは、ようやくやってきたエレベーターに乗り込んだ。