電車で移動すること約四十分。ようやくパリ市街に到着した。
 東京も夜になればいろんな灯りでいっぱいで綺麗だけど、やっぱり外国の景色は新鮮で魅力的に感じる。

 幻想的な夜の街を眺めながら、おしゃれなレストランで食事をした。

 それから地下鉄で移動して、住宅街へ移動する。

 重厚な石壁の建物がひしめき合う光景はあまり見慣れず、私はひたすらきょろきょろと辺りを見回していた。

 一棟のアパートの前で織が「ここだよ」とひとこと言った。
 私は六階建てのアパートを仰ぎ見て、しみじみと返す。

「へえ~。ここが織の家なんだあ。本当にパリに住んでるんだね」

 螺旋階段を上っていく。最上階ともなると、運動不足がたたって結構きつい。
 当然織はまったく突かれてなんかいない。

 ようやく部屋にたどり着き、織に促されて中へ足を踏み入れる。

 間取りは1DKというところだろうか。壁紙は真っ白で明るく、バルコニーにテーブルと椅子が置いてあっておしゃれな部屋だった。

「もうちょっと広いとこ探したらってハンナによく言われてたけど、引っ越し面倒でずっとここ。治安も悪くないし、気に入ってる」
「ふうん。わあ……っ!」

 なにげなく格子の窓から外を見た瞬間、思わず感嘆の声が漏れる。

「織! 部屋からエッフェル塔が見え……」

 振り返るのと同時に、後ろから抱きしめられる。突然のことに、窓の向こうのエッフェル塔の存在さえ忘れ去った。

 織の腕には力が込められていて、密着した背中から熱を帯びていく。
 硬直していると、耳元でささやかれた。

「……会いたかった」

 織のちょっとつらそうな声に、胸の奥がきゅうっと音を立てる。

「私、も――」

 そうして織を振り返り、私たちはどちらからともなく唇を重ねた。