「いいよ。と言っても二泊三日だし、ソフィーの式もあるからゆっくり観光とまではいかなそうだな」
「仕方ないよ。今回の目的はソフィアさんの結婚式! 楽しみだなあ」

 以前、うちで撮影したときの写真は見せてもらったけれど、実際見たらもっと素敵に違いない。

 明日の式に思いを馳せていると、織が言う。

「にしても、ホテルじゃなくてよかったのか? 俺のアパートメントは今や第二のアトリエ化しててあんまりきれいじゃないし」
「いいの! 織がどんなところで生活しているか見たかったから」

 本当はソフィアさんがホテルの手配もしてくれていたんだけど、私は織の暮らしを感じてみたくて丁重に断っていた。

「それにホテルにしちゃったら織といる時間がさらに減っちゃう」

 織が急に、ぴたっと足を止める。

「織?」
「再会早々、可愛いこと言われると困る。この場で押し倒したくなるだろ」
「え、えっ……」

 照れるのを隠すように眉間にしわを寄せる織を、おろおろとして見上げる。すると、織はさらに距離を詰め、私の耳介に口を寄せてきた。

「俺も一緒にホテルをとって泊まるって手もある。ツインベッドは広いと思うけど?」
「なっ……に、を」
「まあ狭いほうが麻結の近くにいられるからいいか」

 かあっと顔が熱くなり、うまく言葉も出せない。
 潤んだ瞳で織を睨みつけると、織は意地悪な笑みを浮かべていた。