次の日。ソフィアさんがやってきたのは、定時を過ぎた六時頃だった。

 仮仕立てのドレスのお披露目に立ち会ったのは、私のほかに佐渡さん、部長、宣伝部の二名、井野さん。そして、織。

 井野さんは直接関係ないのに、『気になって佐久良さんについてきちゃった』と言っていた。

 トルソーに被せてあった大きな布を私と佐渡さんで取る。
 純白のウエディングドレスが露わになると、その場にいたみんなが目を見開いて感嘆の息を漏らした。

「Awesome!(すごい)かわいい! バックのフォルムがきれい!」

 ソフィアさんはとても気に入ってくれたようで、ドレスに抱きついていた。
 私は佐渡さんと目を見合わせて笑った。

 それから、実際にソフィアさんがドレスを着て、佐渡さんがきちんと採寸をした。

 彼女は本当に結婚式でこのドレスを着てくれるらしい。もちろん、約束のモデルの話も承諾してくれて、部長も大喜びだった。

 今後の話をし終えたときにはすでに日は落ち、時刻は九時を回っていた。それぞれ解散となり、パラパラと制作室を後にしていく。

「瀬越、すごいな。俺、正直こんな結末まで想像してなかったよ」
「私もですよ。佐渡さんと佐久良さんがいてくれたからです」
「なに言ってるの。そもそもあなたがいて、今回の件が始まってうまく着地できたんじゃないの?」

 井野さんの声かけに恐縮したら、すぐさま佐渡さんが言葉を挟んできた。
 私はそのセリフに胸を打たれ、本当に自分のデザインしたドレスを認めてもらえたのだと実感する。

「俺も身が引き締まる思いになった。明日のオープン、絶対に売上目標に達するように頑張るよ」

 井野さんはそう意気込んで、制作室を出て行った。

 あの様子だと、このあとも残ってなにか仕事をするに違いない。

「私も。昨日は佐久良さんと瀬越さんが頑張ってくれたから、今度は私が頑張る番だ。今夜からやるよ」

 佐渡さんまでやる気に満ちた表情で言って、颯爽とウエディングドレスの元へ行ってしまった。

 私はどうしようかとおろおろしていると、肩に手を置かれる。