オフィスに着き、デスクについてちょっと仕事をして、時間になったら会議室に移動する。
席は自由だ。前のほうに腰を下ろすと、後ろから声をかけられた。
「瀬越、おはよう」
「井野さん! あの、昨日は……すみませんでした」
昨日、せっかく井野さんが私に気遣って新店舗の見学を提案してくれたのに、私はほとんど見ることもせず、そそくさと織を連れて帰ってきてしまった。
申し訳ない気持ちで謝ると、彼は私の隣に座って言う。
「いや、別に。仕事放って帰ったわけじゃないし……なんか事情がありそうだったし」
「じ、事情っていうか」
しどろもどろになりかけたところで、本部長やMDの社員がずらずらと姿を現す。
井野さんは「じゃ」と開発部の社員がいるところへ戻っていった。
「おはようございます。まずは〝M-crash〟の新店舗について報告します」
開発部長の挨拶を耳で聞き、私は手元の資料を見る。
「本日は、来月末にオープンする新ブランド〝M-crash〟で売り出すメインアイテムの監修をしてくださることになった、フランスの〝Sakura〟の方がいらっしゃっています。どうぞ」
周りが一気にざわついた。
もちろん、私も開発部長のひとことで顔を上げる。周りの社員と同様、辺りを見回す。
ドア付近を注視すると、本部の社員に促され、歩みを進める人物が視界に入った瞬間、私は目を疑った。
彼は私たち社員の前に立ち、一礼する。
席は自由だ。前のほうに腰を下ろすと、後ろから声をかけられた。
「瀬越、おはよう」
「井野さん! あの、昨日は……すみませんでした」
昨日、せっかく井野さんが私に気遣って新店舗の見学を提案してくれたのに、私はほとんど見ることもせず、そそくさと織を連れて帰ってきてしまった。
申し訳ない気持ちで謝ると、彼は私の隣に座って言う。
「いや、別に。仕事放って帰ったわけじゃないし……なんか事情がありそうだったし」
「じ、事情っていうか」
しどろもどろになりかけたところで、本部長やMDの社員がずらずらと姿を現す。
井野さんは「じゃ」と開発部の社員がいるところへ戻っていった。
「おはようございます。まずは〝M-crash〟の新店舗について報告します」
開発部長の挨拶を耳で聞き、私は手元の資料を見る。
「本日は、来月末にオープンする新ブランド〝M-crash〟で売り出すメインアイテムの監修をしてくださることになった、フランスの〝Sakura〟の方がいらっしゃっています。どうぞ」
周りが一気にざわついた。
もちろん、私も開発部長のひとことで顔を上げる。周りの社員と同様、辺りを見回す。
ドア付近を注視すると、本部の社員に促され、歩みを進める人物が視界に入った瞬間、私は目を疑った。
彼は私たち社員の前に立ち、一礼する。