「あ……はい。えーと、日本語がお上手ですね」
「ありがとう。でもシキといるときは、よく違う言われるわ。悔しいので、ここでは日本語使う」
「いや。だいぶ上達してるよ」
「Really?」

 横から織がぽつりとつぶやくなり、彼女は天真爛漫に笑って飛びついた。

 ブロンドの髪に朝陽が当たり、ソフィアさんの輝きがいっそう増している。
 同性である私でも可愛いなと思うくらい。

 天使のようなソフィアさんの魅力にうっかり引き込まれ、織に抱き着いている状況に改めて気づくのに遅れた。

 すると、織が容赦なく彼女を引き剥がす。

「ソフィー、あまり抱き着いたりするな。ここは日本だ。それに今、英語話してたぞ」
「Oh,sorry.シキは細かいね。ま、それはソフィーのお気に入り。シキ、いつフランスに戻るの?」

 ソフィアさんの質問に、心臓が嫌な音を立てた。

 ちょうどさっき考えていた。織の返答はどうなのか。
 聞きたいけど、知りたくない気もする。

 覚悟が決まらず、織を視界から外した。そのとき、また別の声が飛んできた。

「ソフィア!?」

 現れたのはハンナさん。彼女は目を見開いてソフィアさんの前に立った。

「Hi,Hanna.アナタも日本に?」

 ふたりの様子だと、もともと知り合いみたい。モデルだったのなら、ハンナさんも仕事でかかわってたのかもしれない。

 クール系のハンナさんと、大人可愛い系のソフィアさんは並んでいるととても絵になる。いつも通っているオフィスなのに、まるで別世界に来たみたい。