『ねえ織。この洋服にハートをつけたら可愛いと思わない? 織、つけてよ』
『いいけど』
『わあ。織って本当に上手。これ、麻結の一番のお気に入りにするね! ありがとう』
『うん……』

 小さいころの織が、照れくさそうにはにかんだところで目が覚めた。

 実際にあった日常の夢。私の幼稚な発想とわがままで、織はいつも振り回されていたと思う。

 それなのに、言われるがまま、私の服にワンポイントをつけて、出来上がったら小さく笑っていた。

 いつも私の後ろにいる、控えめな織。なんでも受け入れてくれる織。

 昨日の彼は、本当に同じ織なの……?

 私はベッドの上でぼうっとして、昨夜のことを回想していた。キスされるような行動を思い出し、顔を覆う。

 距離……近かった。
 キスなんてするわけないのに、勝手に想像して心臓が爆発しそうにドキドキした。

 記憶を辿るだけで、また鼓動が速くなる。

 私は頭を横に振って、ベッドから降りた。おもむろにデスクにあるスケッチブックを手に取る。

 お気に入りの服を見つけたり、こんな服があったらいいなというものをときどき書き留めている。
 絵はお世辞にもうまいなんて言えたものじゃないけれど、誰が見るわけでもないのだから、と自由気ままに描き綴った大切なもの。

 今朝の夢くらいの年だったか。
 らくがき帳だけにとどまらず、折り紙や広告の裏に今と同じように頭に浮かんだ絵を描いていた。

 いつか、ただ販売するだけじゃなく、一から商品を考えられる場所に行けたらいいな。大変だろうけれど、きっと楽しい。

 私はパタンとスケッチブックを閉じる。