涼介の家は凄い田舎にあって、街灯もあまりなかった。
そこで、切れた電球を買いに、一度だけ行ったコンビニを探して歩いていると、軽トラックが横付けしてきて、中から人の良さそうなおじいちゃんが、声をかけてきた。

「どこに行くの?」
と聞かれ、
「近くのコンビニって、どこにあるかわかりますか?」
と聞くと、
「結構遠いよ?乗せていこう!」
「ありがとうございます。」
……乗り込んで、発進すると、どこにもコンビニらしきものが見当たらない。

 ………ヤバい………

まだ17才、気付くのが遅すぎた。

車はひと気も車のライトも当たらない、土手で止まった。…と、男は突然ドスの効いた声で言った。

「逃げたら殺すぞ」
腕を強く捕まれ、わたしはその瞬間感情に蓋をした。

「……で、どうしたらいいんですか?」
「車を下りて、横になれ!」
「これでいいですか?」

男はモノを押し込んで…?
入ってるのかわからない間に、勝手にイッてしまった。

………は?………

失礼だけど、そう思ってしまう。

まぁ、とりあえずコトは終わって、元の道に戻る途中、男は

「もう1回ヤッてもいい?」 
と聞いてきたので、
「ここでいいです!迎えに来てもらうんで!」

と言って、車を降りた。

涼介に泣きつく。……が、
結局ヤられたんやろ!と怒られただけだった。

涼介の迎えを待っていると、車が前に止まる。さっきので凝りていたから、顔を上げるだけにした。

すると、中のお兄ちゃんは窓を開けて、
「マジで引くわー!おねーちゃん可愛くなかったら死罪もんよ!俺さっき怖い話聞いたばっかやけ、マジのヤツかと思ったわー。」

お兄ちゃんの口調に思わず笑うと、
「うん、やっぱ笑ったら可愛いわ!何しよん?良かったら送ろうか?」
「彼氏が、もう少ししたら来てくれるけ平気!」
「そしたら、電話番号と名前だけでも!…無理?」
「いーよ!お兄ちゃんのおかげでちょっと元気出たから、お礼!」
「やりぃ!ちょい待ってね…どーぞ!」
「070-****-**** 名前は愁だよ!」

とりあえずお兄ちゃんとはバイバイして、涼介を待つ。

涼介は迎えに来てから帰るまで、何も喋らなかった。

これが、わたしの強姦⁉事件。
どうせされるなら、もっとしっかりされてたら犯されたって言えるんだけどね………。

どう感じるかはあなた次第です、

わたしはというと、仕事でなかなか会えない涼介に苛ついていた。

 素人童貞だった涼介と、初めて付き合ってあげたのに…なんなの?…実家暮らしで、家にも帰らなきゃだし…忙しいとか、仕事だ、残業だって…

 わたしはベッドにころがって、携帯をいじくる。さて、どぉしよぉかなぁ………。出会い系サイトの男の書き込みを適当に見ていく。21歳の書き込みに目がとまる。

 福岡住み、車持ちか……。書き込みも下心なさ気だし……うん、いーかも!

 わたしは早速返信する。

『カラオケとお酒好きなんで、一緒に遊びませんか?一応彼氏持ちなんで、関係有りならパスでお願いします!』

 こんなもんか…。返信あるかなぁ…。
(さとる)は割とすぐ返信をくれた。

『オレも、酒は好きで、カクテルとか家で作ってるよ!今はフリーやけど、近いうち会おう!』
『昼間基本いつでもヒマやけ、こっち来ることあったら会おっか!』

 久しぶりの感じにワクワクした。涼介への罪悪感はほぼ皆無だった。

 その週の間に智は来た。細身で長身、そこそこカッコいい優しそうなお兄ちゃんだった。へー、こんな人ならあんなサイト使わんでもよかろーに………。と、感心していると、
「愁ちゃんって本名?偽名使う子多いから…。」
「本名だよ!相沢愁!」
「彼氏持ちかー……意外に好みなんやけどなぁー……。」
「残念!彼と別れても、もう一人おるし………。」
「は?どーゆーこと??」

時間を忘れて話し込む。
楽しかった。智は、今度は家においで!と言って帰った。

家に行くのはちょっとためらった。
しかし、デートの約束をすっぽかされた時に、何気なく電話をしていた。
智は、
「いーよ。このバス停まで来て!」
と、即答してくれた。

智の家はオシャレだった。
ベッドは白く、ガラステーブルと、お酒の瓶、カクテルシェイカー、モノ作りかすきなのか、ステンドグラスや、タイル、針金、ペンチなどが無造作に置いてある。

「ねー、ここ禁煙?灰皿ないけど…。」
「いや、俺が吸わんだけで、友達吸うけあるよ!」

 智は、手際よくつまみを作ると、急いで出してきた。
 すごいなー…なんでもできんじゃん…。
 わたしは、素直に感心しながら、智の作ったジンライムを飲む。……うまっ……

 ごきげんで飲んでいると、
「愁ちゃん、こんなの好き?」
と、ベランダから呼ばれた。
 行ってみて、わたしははしゃいだ!
「ハンモックやん!!楽しそう!」

「寝てみていい?」
わたしは智の返事を待たす、グラスを押しつける。
智は微笑みながら様子を見ている。

ハンモックに横になり、揺られていると、酔いがいい感じに回ってくる。
わたしは眠くなってきた。

「眠たぁい。智くん、今日泊まっていい?」
「いいよ!ベッド1個しか無いけどいい?」
「変なことせんでよ!」
「しないよ」
笑う智に、安心感を覚え、一緒の布団に入る。

 本当に翌朝まで、智とはなにもなかった。

 智とは両親公認の友達だった。18の誕生日には大きなくまのぬいぐるみを…、Xmasには2万もする指輪を貰った。

 でも、お互い彼氏彼女がいるときは、干渉しなかった。

 17の時、一度だけ、家族とテーマパークに行った。涼介が行けなかったその日、智に1日彼氏になっていいけ、連れて行って!と頼んだことがある。

 その日は、テーマパークの中で待ち時間があれば、チューするようなラブラブっぷりで、わたしはすごく好きだと思った。行き帰りの車の中でさえ、手を繋いで離さなかったくらいだ。

 しかし、彼氏になるまでは身体の関係は持ちたくないと、どれだけこっちがモーションをかけても、なびかなかった。

 智は彼氏ではないので、別れることが無かった。彼女が出来てもわたしにくれた合鍵は、そのままだったし、電話をすれば入っていいと許可ももらっていた。だからかもしれない。旦那と結婚するまで、ずっと関係は続き、父からの信頼も厚かった。

 今の旦那と結婚していなければ、智が一番近い存在だったと思う。