「な、なんだよ、てめぇ!」
悠馬が凄むけど、勢いはない。驚いているんだ。
男は__たぶん、背も高いし男だと思う。はっきり分からないのは、マントのようなものを羽織り、フードを深く被っているからだ。しかも、顔にはお面をしている。
蝋で固められた表情の、得体の知れないお面を。
それがいきなり目の前に現れたんだ。
びっくりしないほうがおかしい。
「なんとか言えよ!」
悠馬が今にも飛びかからん様子で、仮面の男に詰め寄る。
誰もが固唾を飲んで見守るなか__。
「死神だ」
ぼそっと呟いたのは、賢太だった。
死神?
そうだ。
私もそう思った。
黒いマントを纏い、表情が歪んだお面をつけ、そしてその手には__。
鎌が握られている。
稲刈りをするときの、鋭く円を描いた鎌が握られていたんだ。
死神?は、悠馬の挑発には目もくれず、ただジッと見つめていた。
目の前の、明香を。
しりとりゲームで失格者となった、明香のことを。
「に、逃げて!」
私がそう言う前に、死神の手がゆっくりと持ち上がる。
「へっ__?」
明香が、間の抜けた声を出した。