フラフラと、前に躍り出る新田くんの顔からは、生気が消え去っている。


「めぐみも居ない、そんな現実にはもう戻りたくないんだよ」


「そんな__」


「田辺、すまない」


「さっき、ついさっきまでゲームを終わらせるって言ってたのに!そんな、私、1人になっちゃうよ」


胸を突き上げる寂しさに、涙が溢れてくる。


「大丈夫だよ、田辺」と言ったのは、賢太だった。


「僕がすぐに、殺してあげるから」


カッターの刃先に、自ら向かっていく新田くんを受け入れたあと、私の体を切り刻むんだ。


「できれば、苦しまないで殺ってくれ」


「ああ、分かった。僕が望み通りにしてやるよ」


にんまりと微笑む賢太が、カッターを新田くんのお腹に向かって突き出す。


「楽にしてあげるから」


と__。


「楽になるのは、お前のほうだよ」


「えっ?」


「なにか忘れてないか?」


今度は、新田くんがほくそ笑む番だ。


「お前は今、ターゲットなんだよ__死り神さまのな」


そう言うと、賢太が後ろを振り返る。


ちょうど、死り神が屋上によじ登ってきたところだった。


ブーメランのように放った鎌が、賢太の頭をとらえる。


屋上に、血が噴き出した。