「あいつが敵対視してんのは、神楽さんじゃなくて俺だってこと」

「ん?」

「あいつは俺に神楽さんを取られたくないんだよ」

その言葉の意味を理解するのに数秒かかった。

「神楽さんのこと、あいつなりに大事に想ってるんだと思う」

「…………」

ん?

つまり、私に黒田くんと仲良くしてほしくないってこと……?

「ええっ!」

「はは、おっそ!」

うそだ、だって……そんなこと。ありえないでしょ。

「そこまで抜けてんの、今どき神楽さんぐらいじゃん?」

「でで、でも、だって、咲は私のこと嫌ってるはずで……」

「嫌ってたら、そもそも喋んないよ、あいつの場合」

「う、うそだ……」

だってそれじゃまるで、咲が黒田くんに嫉妬してるみたいじゃん。

「そんなに全否定しないでやってよ。俺はうれしいんだよね、あいつの必死な姿が見れて」

そんな風に言われても未だに信じられなかった。

チラリと咲の様子をうかがうと、思わず目が合って大きく心臓が跳ねた。

「ほらな、見てるだろ。こっちを。俺が神楽さんと仲良くしてるのが気に入らないんだよ」

「し、信じられない。たまたまだって」

そう言い切って、残りのパスタを口に入れた。

モゴモゴと口を動かすけど味なんて全然わからなくて、黒田くんのせいで変に意識してしまった。