「四人掛けの席空いてないなぁ。ふた手にわかれるしかないか。俺と花菜ちゃん、咲と神楽さんってことでどう?」
「え」
「異議は聞き入れませーん!」
ご飯が乗ったトレイを手にした黒田くんは、ふたり掛けの席を素早く確保しに向かう。
咲も咲で別のふたり掛けの席の方へと歩いていく。
花菜と顔を見合わせ、思わず微笑む。
「ごめん、葵。今だけ黒田お願いしていい?」
「え!」
「ご飯のときまでマシンガントークされたら、さすがにツラいからさ。今だけ!」
切実に懇願されて、断ることができなかった。私は全然いいけど、黒田くんには申し訳ないな。
「あれ? 花菜ちゃんは?」
「あ、なんか窓際の席がよかったらしくて!」
「えー、残念だな……」
「私でごめんね」
「いやいや、全然。むしろ今日付き合ってもらって逆に感謝してるくらいだから」
黒田くんは照れたようにはにかんだ。その笑顔からは花菜を大切に想う気持ちが伝わってくる。
「花菜のこと好きなの?」
「まぁね。けど、花菜ちゃんには全然信用されてないっぽい」
はぁと落胆する黒田くんは、どうやら本気で花菜を好きらしい。