「泉くんが緋色を選んでくれてよかった。緋色が今穏やかに笑えるのば君のおかげだからね。」
「………緋色ちゃんが、俺を選んでくれたんです。」
「…………そうか。緋色、泉くんを大切にな。」
「はい。………お父様、話してくださってありがとうございました。そして、私の勘違いでお父様に酷い事ばかり言ってしまっていました。本当にごめんなさい………。」
「いいさ。わたしがお前に話せなかったのが悪いんだ。………おまえがよかったら、話しをするよ。」
ポロポロと泣いて謝る緋色を慰めるように、父は微笑んだ。
その笑顔は、昔の写真でしか見たことがないものだった。
その後、昔のアルバムを取り出して、望が幼い頃の緋色の話をしてくれた。話題の中心が自分だというのは、とてもくすぐったい思いがしたけれど、2人が楽しそうに話しているのを見ているだけで、緋色は嬉しかった。
アルバムには、ところどころ抜けている所があった。それを見て、昔は「茜じゃない本当のお母さんがいたのかもしれない。」と思っていたけれど、父は「昔からこうだったよ。」と、言うだけだった。
不思議な気もしたけれど、今、父がそういうのならば信じるしかないなと思った。