緋色は話ながら感情が高まってきてしまったのか、瞳から涙が溢れてきた。ポタポタと服やテーブルに大粒の涙が落ちる。
今まで誰にも相談できずにいた家族の秘密。
それは記憶をなくした緋色にとっては大きな衝撃だった。誰も信用できない状態で、家族さえも疑わなければならない。それが、どんなに辛い事だったのか。
自分でも気づかない内に緋色は大きな負担を背負っていたのかもしれない。
すると、黙って聞いていた泉が緋色の隣の席に座り、涙を指で拭ってくれた後に手を優しく握ってくれた。
「緋色ちゃん………その手紙を見てからずっと考え込んでいただろうね。そして、家族だけが信頼できる時に、そんな事を思っていたなんて辛かっただろうね。」
「……………私、ずっと写真に写るお母様が自分の本当のお母様じゃないのかもしれないって思ったら…………本当はどこの誰なのか不安になって仕方がなかったの。」
この手紙の名前を見ると父に聞かされたお母様と一緒だった。だったから、その違う人とお父様との子で、お母様はいなくなってしまったのだろうか。それとも、写真の人は違う女の人でお母様は私を産んだ後にお父様と別れてしまったのだろうか。
正解がわからないまま、そんな事ばかり考えていた。