それからは小走りで目的のお店へ向かった。そこは、香水だけではなくお香や、本格的なたばこなど、香りやスパイスの物を多く取り扱っている場所のようだった。地下の店内は広く、お客さんも男女問わず数人がお目当ての物を探しているようだった。いろいろな香りが混ざり合い不思議な香りがしたが、不快でもないのが不思議だった。
 緋色はすぐに香水コーナーでピンクシュガーのボトルを見つけた。試しに自分の左手首につけてみると、あの甘い香りが広がる。少し違う香りになるのは泉がつけているものではないからだろう。
 香水はつける人によって香りが変わると聞いたことがあった。同じ香りをつけた時に、自分はどんな香りになるのだろうか、と緋色は思った。

 その後、ピンクシュガーの香りのボディソープやハンドクリームを見つけたり、香水の持ち運び用アトマイザーもあったので、そちらも一緒に購入をした。お店の人に、香水のおすすめの付け方や、「甘い香りが好きでしたら、こちらもどうぞ」と、他のアロマオイルのお試し用も貰った。

 紙袋に欲しかったものが沢山詰まっている。
 緋色はそれをうけとると、自然と笑みが浮かんでくる。店を出て、地上への階段を登りながら、紙袋の中にある綺麗に包装してもらったものを見てニッコリと微笑んだ。


 「泉くん、喜んでくれるかな?」


 緋色はそう呟きながら、プレゼントを渡したときの泉の表情を想像する。きっと、「ありがとう!嬉しいよ」と言って、満面の笑みを浮かべてくれるはずだ。
 それを考えると、先ほどからニヤけてしまう。
 
 「早く会社に戻ろう」


 緋色は紙袋をギュッと抱きしめながら地上に出た。