「で、何かあったの?空手王子様と。」
「か、空手王子?」
「知らないの?ファンの間ではそう呼ばれているみたいだよ。」
「そ、そうなんですね。」
愛音とのランチは近くの定食のお店だった。
このお店の親子丼が絶品で、お昼時にはかなり並ぶのだが、今日は早めにランチの時間にしてもらったので並ばずに入店する事が出来た。
トロトロの卵と、大きめに切られた鶏肉を食べながら、愛音はさっそく話を切り出してきた。
愛音には、結婚相手が松雪泉だと話している。初めは驚かれたけれど、「いい人ゲット出来てよかったねー!」と、嬉しそうにお祝いしてくれたので、緋色は安心した。
「ファンの間でも、結婚はショックだったみたいだけど、一般人と付き合ってるってずっと話してたみたいだから、そこまで大事にはならなかったみたいだね。」
「そうなんですね…………。よかった。」
「それなのに。どうして、緋色ちゃんはそんな悲しそうな顔をしているのか、が今日の議題なのよ。さぁ、先輩に話してごらんなさいっ!」