朝、6時私は起きた
目覚ましやアラームもない為、自身で起きなければ学校に遅刻してしまう。
そんなことをすればお母さんに怒られてしまうのが目に見えるため、早く準備して学校へ行かなければならない。

歯を磨いて、顔を洗って、制服に着替えて…
鞄を背負えば、まだ起きてこないお母さんを起こしに行く。

「お母さん起きて、朝だよ。私もう学校いくね?」

そう声をかければ、もぞもぞと布団が動く

「朝からうるさい…早く行って……。」

「分かった、いってくる。」

ガチャっと重たいドアを開ければ、生温い風が全身を覆う。

今日も憂鬱だ。


「おはよっ、秋!」

学校へいく通り道、坂を上っていると後ろから肩を叩かれ声をかけられる。

友達のりほだ。

「おはよ、りほ。」

りほの家はここの近くにあり、いつもこの場所でよく会う。

「ねぇ、今日の宿題やった〜?みせてー!」

「あぁ、うん。いいよ。」

本当は嫌だけど…。と思っても何も言えない私は
今日もノートをりほに貸すのだ。


学校についても気は休まらなかった。

「じゃあ、またね〜。」

そういってりほは隣のクラスに入る。
ほぼ毎日一緒に登校しているが、りほとはクラスが同じではない。

「またね。」

りほを見送り、教室の前で暫し立ち尽くす。
これは私が最近、教室に入る前にすることだ。

意を決して教室の扉を開ける。
慎重に音を立てずに開けたはずなのに、みんなの視線が私に向く。

痛い視線を真正面からバシバシと感じていた時だった。

「秋ちゃーん!おはよーっ!!」

どーんっ!といって私に抱き着いてくるのは友達の未央だ。


彼女は男女共に人気のある女の子だ。
可愛らしい容姿と小柄な体格、小動物を思わせるような仕草。誰にでも優しい性格。

学校で1番可愛いといっても過言ではないだろう。



だが、彼女は一定の人とはいず、女子のグループをフラフラとあちらこちら転々と彷徨っているだけだった。

そんな彼女だからか、彼女と共に行動したい、友達になりたいという人は後を絶たない。


そんな彼女と共に行動し、尚且つ友達というポジションである私はみんなに疎まれている存在である。

なぜこんな地味な私と彼女が友達なのかというと、1年ほど前に遡る。











友達もあまりいない私は、ただ一人廊下を歩いていた。
すると目の前から可愛らしい女の子が歩いてくるのが見えた。
それが未央だった。


可愛い子だなぁ…としか思ってはいなかったが

真横を今まさに通り過ぎようとした時だった。

バシッ

「ねぇ…君名前なんて言うの?」

突然腕を捕まれそう聞かれた 。

「えっ?わ、私の名前?」

狼狽え、詰まりながら問う。

「そう、君の名前。教えて?」

身長差約20cm、私の方が遥かに未央より大きいのに圧倒される。

「ええと、秋っていいます。」

そう答えると未央は今までのが嘘のようにぱっと可愛らしい顔を綻ばせ笑顔になった。

「僕、未央っていうんだ!よろしくね!」

そういってぎゅうっと抱きついてきた。










それが私と未央の出会い、あの時は本当に驚いた。

あの後、なぜ私に話しかけたか聞いてみたら
「一目惚れした!」という謎の解答が返ってきた。
どうやら私は未央の好きなタイプにピタッと当てはまっていたようだ。

"黒髪ストレートの眼鏡っ子"

ならば眼鏡を外せばいいのか?と思い外してみてもあまり意味は成し得なかった。

そんな経緯があり、私は未央と友達だ。
最初は可愛い子が私の友達っていうことでとても誇らしかったし、嬉しかった。
けど、私はあの子の本性を何一つ知らなかった。

まず、独占欲が強い。
私が誰かと話してるだけで間に割り込んでくる。私の隣の席になった男子のことを睨み倒したりする。そんなことをすれば未央が嫌われてしまうかと思いきや、何故か私がみんなから嫌われる存在となってしまった。

"あいつに近付くと未央に嫌われる"
"あいつが未央と一緒にいるせいで未央とお話できない"
"あいつのせいで…"

幾度となくその言葉をきいたのだろうか。
それでも私は必死に耐えに耐えた。

そしてあと1つ。
未央の恋愛対象は"女の子"だったのだ。
つまりは未央は同性愛者なのだ。
それだとしたら、あの時の言葉も頷ける。ということは私は未央の恋愛対象ド真ん中ということになる。だが生憎、私にはそういう趣味はないし、まず好きという感情がわからない。だから未央の気持ちには答えることが出来ない。とあの子に言ったのだが、

「え、?秋は未央のだよ?絶対に誰にもあげない。秋だって未央のこと好きだよね?僕は秋のこと大好きだよ?だから秋も未央のこと大好きだよね」

と何を言っているのか分からないが、聞き入れてもらえなかった。

このような日常を私はここに綴っていく。