それは…
つまり…
その…
俺も男なわけで。
健全な男子高校生なわけで。


ずっと好きだった相手を前にして
我慢出来る保証はない。


付き合ってまだ二週間だし、
いや、そもそも”フリ”の状態で一線を越えていいわけがない。


まだ俺の理性が残ってるうちに…


「今日は帰るわ。」


勇気を出して言ってくれたことは
十分伝わってる。
だけど、ここでその要望に頷くわけにはいかないんだ。
色々と。


俯く美波の頭に
ポンと手のひらを乗せ


「また明日な。」


踵を返して
帰路へ体を向けると


「…嫌だ。」


後ろからふわっと
桜の香りがして背中に感じる温もりに
お腹のほうに回された細い腕。


美波に抱き着かれていると気付くのに
時間はかからなかった。