一番しっくりきた表現を声に出してはにかんだ。〝好き〟とはまた違うがそれに近い、あったかい気持ちになるのだ。

私を眺めていたふたりが、目を見合わせてニンマリと頬を緩める。


「うまくいくかなーって心配してたけど、恋が芽生えるのも時間の問題みたいだねぇ、ほのちゃん」

「そうですねぇ、藪さん」


ほのぼのと見守られている感じがくすぐったくて、私は顔を火照らせつつ肩をすくめた。



周さんが自室で浴衣に着替えている間、お皿やグラスのセッティングをしていると、ほのかちゃんが不意に話し始める。


「私の家は、昔は一柳家に使用人として仕えていたんですよ」


グラスを置く手を止めて目を向ければ、彼女は控えめに微笑む。


「父が病気になって、費用のやりくりで困っていたら、それを知った一柳さんが『家事手伝いのバイトをしないか』と声をかけてくれて。ここだけの話、普通ではもらえない額のお給料をいただいています」

「それで手伝いを始めたんだ……。えらいね」


陳腐な言葉しか出てこない自分に呆れるが、若くして家族のために働いていることには本当に感心する。

ほのかちゃんは箸を置きながら、謙遜するように首を振った。