口止めする藪さんに、私は一応頷くけれど……今のがわかりやすかったの? 可愛い?

やっぱり私はまだまだ周さんのことを把握できていないようだ。彼をよく知っているふたりが、ちょっぴり羨ましい。

もどかしさを抱く私に、藪さんはおもむろにオーブンのほうへと向かいながら、周さんについて語りだす。


「あいつ、恋愛は心を動かされるから苦手なんだと思う。元々の性格がクールだし、変に理屈っぽいところもあるし。たぶん、本気で誰かを好きになったことはないんじゃねーかな」


恋愛が苦手、か……。確かに、女子が喜びそうなことをするタイプではないよね。なんといっても愛想が悪いし、厳しくて素っ気ないし。

なんとなくわかる気がして頷いていると、藪さんはオーブンから熱々の和風ローストチキンを取り出し、「だけど」と話を続ける。


「仕事でも私生活でも直感はかなり大事にしてて、〝これだ〟って感じたことに対しては熱心になるんだよ。まっすぐ向き合って、試行錯誤して、一生懸命になる。あいつをよくよく注意して見てると、それが言葉とか態度の端々に出てることにそのうち気づくんだ」


藪さんの話には思い当たることがいくつもあり、胸がざわめく。