「あ、周さん! 藪さんはなにも悪くないんですよ。私がわがまま言ってついていったんです」


ふたりの間に入ってそう言うと、周さんの冷たい瞳がジロリとこちらに向けられた。

ひぃ、と声を上げそうになるも、藪さんはまったく動じておらず、私にのほほんと笑いかける。


「大丈夫だよ、希沙ちゃん。こいつは俺に嫉妬してるだけだから」

「へ……しっ、と?」


意外なひとことに、皆がぴたりと動きを止めた。


「俺と希沙ちゃんがふたりでいたのが気に食わないんだろ?」


続けられた藪さんのひとことにドキッとして周さんを見やれば、彼も言われて気づいたかのように真顔になっている。

周さんはしばしの間を置いて「……そんなわけないだろう」と呟き、踵を返してキッチンを出ていく。案外あっさりと引き下がっていく彼を、私はポカンとして見送っていた。

結局、嫉妬しているのかいないのか微妙だな……気になってしまうではないか。

しかし、悶々としているのは私だけのようで、ほのかちゃんも藪さんもニヤニヤしている。


「あんなにわかりやすい一柳さん、初めて見たかも」

「かーわいいよなぁ、中学生みたいに初々しくて。あ、これオフレコで」