黄昏の匂いに街が包まれる午後六時半、私は藪さんが作った料理をほのかちゃんと一緒にダイニングテーブルに並べていた。

いただいてきた春キャベツはさっそく豚バラと一緒に蒸し煮に、筍は王道の炊き込みご飯にと姿を変え、とっても美味しそうな香りを漂わせている。

そろそろ周さんも帰ってくるかな。早く皆でディナーを楽しみたい。

鼻歌を歌いたいくらいの気分でお手洗いに行き、キッチンに戻った私は、繰り広げられている光景にギョッとした。

私がいない間に帰ってきていた周さんが、なぜかとてもご機嫌斜めな様子で藪さんに詰め寄っていて、その脇でほのかちゃんがあたふたしているのだ。

追い詰められて冷蔵庫に背中をくっつけている藪さんは、片手をポケットに入れた目の前の周さんに苦笑しながら言う。


「だから、筍をお届けしに来たらたまたま……」

「たまたま都合よく希沙がいたから連れ出したって? 人の婚約者を勝手に連れ回さないでもらえるか」


かすかな苛立ちを含んだその声を聞くと、どうやら周さんが誤解しているらしい。私は慌ててふたりに駆け寄り、止めに入る。