三十分ほどかけて着いた藪さんの実家には、立派なキャベツが綺麗に並ぶ畑が広がっていた。

藪さんの兄夫婦が跡を継ぐそうだが、お年を召したご両親もまだまだ元気で、家族総出で作業をしている。

藪さんが『頼もしい助っ人が来てくれたぞー』と私を紹介すると、皆さんとても喜んでくれた。

私が主に手伝ったのは、キャベツを箱詰めする作業。確かに腕が疲れたが、初めての経験を楽しんでいたらあっという間に午後になっていた。

昼食のおにぎりまでいただき、キリのいいところで切り上げて、今は藪さんと旧一柳邸にやってきた。レストラン用にもらった春キャベツを運ぶために。

今日は、周さんは港区にある本社で会議を行っているらしいので不在だ。

ふたりで厨房に向かいながら、段ボール箱を抱えた藪さんが清々しそうに言う。


「いやー、本当に希沙ちゃんのおかげでめちゃくちゃ助かった。ありがとう。お礼に、今夜の夕飯作りに行くよ」

「いいんですか!? やった!」


私は遠慮もせずに目を輝かせた。夕飯を作らなくていいのもありがたいが、藪さんの手料理を食べられることがなにより嬉しい。