私は一旦部屋に戻り、一応持ってきていた農作業用の服に急いで着替えた。戸締まりをきちんとして家を出ると、藪さんは駐車場に停まっている白いミニバンに背を預けている。

準備万端な私の格好を見て、彼は満足げに頷く。


「さすが茶娘さん、服装は大丈夫そうだな。可愛い婚約者を連れ出しちゃって、周に怒られないかだけが心配だ」

「たぶん大丈夫ですよ。ちゃんと連絡は入れておいたし、『自由に過ごしていていい』って言われているんで、夕飯の準備さえできれば問題ないかと」


相手は周さんもよく知っている人だしね、と思いながら軽く笑って答えた。

ところが、藪さんは私の返答を聞いているのかいないのか微妙な感じで、ひとりぶつぶつと呟く。


「まあ、この件に関しては怒るほうがいい傾向だよな。あいつの本気度もわかりそうだし。……よし、じゃあ行こう」

「え、あ、はい!」


彼の言っている意味がよくわからなかったが、車へと促されたので、とりあえず考えるのはあとにして助手席に乗り込んだ。