慌てて席を立ってインターホンで確認すると、周さんより年上らしき男性がいる。寝癖みたいな無造作ヘアの、渋めの顔立ちをしたイケメンだ。

この人、どこかで見たような……と首を傾げつつ「はい」と応答すると、彼はインターホンに顔を近づけ、緩い調子で言う。


「おはようございまーす。旧一柳邸のシェフです」

「あ!」


言われてわかった。昨日、レストランに行ったときに厨房でちらっとお見かけした方だと。

「少々お待ちください」と声をかけ、小走りで玄関ホールを抜けて鍵に手をかける。一応ジャージから普段着に着替えておいてよかった。

ドアを開け、眩しい日差しと共に男性と対面して、まず挨拶をする。


「おはようございます」

「どうもー。朝っぱらから突然すみませんねぇ」


渋いイケメンさんは、落ち着いた笑みを浮かべて会釈した。そこはかとない気怠さが、大人の余裕を感じさせる人だ。

服装はTシャツにワークパンツというラフな格好で、農作業するときの玄にいや陸と似ているが、なんだかサマになっている。

そんな彼は私を観察するように眺めると、顎に手を当てて意味ありげに微笑む。