しかし、食べてみたら『なかなかの味だ』と褒めてくれて、私は大袈裟に喜んでしまった。辛辣な感想が飛んでくることも覚悟していたから、怖い顔をされなくてホッとした。


「今夜はなににしよう。時間はたっぷりあるし、肉でも浸けておくか」


ひとりごちて、静かに湯呑を口に運んだ。わが家にはいつでも誰かしらいたから、今はやはり寂しくて、無意識にひとり言が多くなっている。

洗濯物はもう干したし、片づけもあと少しで終わるし、このお茶を飲んだら食料の買い出しにでも行こう。昨日の午後、周さんとここの近所を散策してスーパーの場所は覚えたから大丈夫。

なにかしていないとホームシックになってしまいそうなのだ。おかげで干物生活にはならずに済んでいる。

しかし、今度はやることがなくなって困る。

買い出しも料理の下準備もたいした時間はかからないし、あとはひたすら掃除するしかないのか……。

そんなふうに暇を持て余していたとき、玄関のチャイムが鳴ってドキリとした。

まだまだ他人の家でお世話になっている感覚が強く、我が物顔で出ていいものかと一瞬ためらったが、出る以外の選択肢はない。私は婚約者なのだから。