「ほら、また竹川先生に怒られたくなかったらもっと急いで」


「待ってよぉ、真央ちゃん」


慌てて真央ちゃんの後を追っていたあたしの足がビクッと止まり、全身に緊張が(みなぎ)った。


なぜなら、あたしにとって超危険人物の姿が、いきなり両目に飛び込んできたからだ。


あのクルクルの巻髪。そして鋭い光を放つ目をグルリと取り囲む、不必要に長いまつ毛は……。


折原先輩だー! 前方から折原愛美先輩が接近中ー!


なんでぇ!? 三年生が一年生の教室の階になんの用があるの!? しかもこんな五時間目が始まる直前に!


うわー。これ、ぜーったい面倒くさいことになる予感!


「…………」


折原先輩は無言のまま、どんどんこっちに向って歩いてくる。


しかも、身動きできないあたしの顔を、カマキリみたいな目つきでずっとガン見しながら。


ひいぃ。悪意の塊が、両手で(かま)振り上げながらこっち来るー!