どんどん違う方向に勘違いしてくれている。
訂正したいところだけど、そのままでもいいような気がする。


「小野寺さん、わからないことがあったらなんでも聞いてね」
「で、では……一つだけ、聞いてもよろしいでしょうか……?」


坂野さんと東雲さんは固まってしまった。
どうしてかわからず、私は二人の表情を交互に見る。


すると、東雲さんが笑いだした。


「自己紹介のお辞儀の時点で礼儀正しい子だなとは思ったけど、まさかここまでとは」
「小野寺さん、同い年なんだから敬語は使わなくていいんだよ?」


そんなことを言われても、常にそうしていなければならなかった私にとって、どうすればいいのかわからない。


「ありゃ?困らせちゃった」


東雲さんはさらに声を出して笑う。


「少しずつ慣れていけばいいよ。それで?何が聞きたいの?」
「笠木さんという方についてなのですが」


東雲さんの笑い声が止まった。
言ってはいけないことを言ってしまったのだろうか。


「あー……なんで?」
「今朝偶然見かけ、どのようなお方なのか、気になりまして」


二人は互いに顔を見合わせた。


「どんな人って言われても、全然関わったことないから……」