「小野寺さん、どこの高校だったの?」


早速、前の席の人が話しかけてくれた。
その子の友達が一人、その子の席にやって来る。
他の人は自分の友達と話しながらも、ときどき私に視線を向けていた。


転校生というのは、どこでも気になる存在なのだろう。


だけど、私は彼女の質問に答えられなかった。
私が今まで通っていたのは、お金持ちだけが通うような私立高校だった。


そんなことを言ってしまえば、家が裕福だと教えているようなもの。
ただの一般人として接してほしいのに、言えるはずがなかった。


「あ、ごめん!名前言ってなかったね。私は坂野由実。それでこっちが」
「東雲瑞希」


私が答えなかったのを彼女たちのことを不審に思っているからだと思ってくれたらしく、二人は名乗ってくれた。
胸あたりまである髪をサイドでまとめているのが坂野さんで、ショートカットで無表情なのが東雲さん。


一度名乗ったのにまた名前を言うのはおかしいと思い、どうすればいいのか迷って、頭を軽く下げた。


「小野寺さんって、大人しいんだね」
「緊張してるんじゃないの?二年の二学期に転校してきたら、クラスに馴染めるか不安になるでしょ」