どうして、笠木さんに出会ってしまったのだろう。
どうして、笠木さんを好きになってしまったのだろう。


悪いことをしたわけではないのに。
私がお金持ちの娘というだけで、普通の恋愛ができないなんて。


そんなの、今さらだ。


前からわかっていたこと。
わかって、いた。


それでも、笠木さんへの想いを失うことはもうできない。


やりたいことを我慢するのは、好きじゃない。


私だって、そうだ。


笠木さんが自由にできるように、私だって自由になりたい。
笠木さんを好きでいたい。


だけど、その気持ちを殺すためにシーツを強く握りしめる。


そのとき、ノックの音がした。


返事をする気力もなく、自分からドアを開けた。
立っていたのは柳だった。


「お嬢様、夕飯の支度が……お嬢様?大丈夫ですか!?」


よほど酷い顔をしていたのか、柳が慌てた顔をしている。


「……寝たら治ると思うから、申しわけないけど、今日はご飯は……」
「気になさらないでください。すぐにお風呂の準備をしてきます」


柳は軽く頭を下げ、走っていってしまった。
また部屋にこもろうと、ドアを閉めていると、お父様が廊下を歩いていた。


気付いたのにドアを閉めるわけにもいかず、部屋から出る。