私が引かないからか、笠木さんは眉をひそめた。
困らせてしまったのは申しわけないけれど、これだけは譲れない。
笠木さんと出会わなければ、笠木さんに厳しく言われなければ、私は変われずにいた。
変わったのは、ここに来たからだけではないのだ。
「……まあいいや。色は、一週間ゆっくり考えるといい。じゃあな」
「はい、また明日」
去っていく笠木さんの背中に手を振る。
笠木さんの姿が見えなくなると、急に足に力が入らなくなった。
まるで、緊張から開放されたような感覚。
だけど、暖かい気持ちになっていて、顔がにやけてしまう。
今日はよく眠れそうだ。
◇
「おかえりなさい、お嬢様」
家に帰ると、奈子さんが出迎えてくれた。
「ただいま、奈子さん」
奈子さんがカバンを受け取ってくれるけど、奈子さんは私の顔を見つめてくる。
「お嬢様、なにかいいことありました?」
「……どうして?」
動揺が隠しきれていないように思うけど、一応聞いてみる。
「頬が緩んでますよ」
奈子さんは私の頬に触れた。
落ち着かせて帰ってきたはずなのに、気付かれてしまって両手を頬に当てる。
「私、そんなにわかりやすい……?」
困らせてしまったのは申しわけないけれど、これだけは譲れない。
笠木さんと出会わなければ、笠木さんに厳しく言われなければ、私は変われずにいた。
変わったのは、ここに来たからだけではないのだ。
「……まあいいや。色は、一週間ゆっくり考えるといい。じゃあな」
「はい、また明日」
去っていく笠木さんの背中に手を振る。
笠木さんの姿が見えなくなると、急に足に力が入らなくなった。
まるで、緊張から開放されたような感覚。
だけど、暖かい気持ちになっていて、顔がにやけてしまう。
今日はよく眠れそうだ。
◇
「おかえりなさい、お嬢様」
家に帰ると、奈子さんが出迎えてくれた。
「ただいま、奈子さん」
奈子さんがカバンを受け取ってくれるけど、奈子さんは私の顔を見つめてくる。
「お嬢様、なにかいいことありました?」
「……どうして?」
動揺が隠しきれていないように思うけど、一応聞いてみる。
「頬が緩んでますよ」
奈子さんは私の頬に触れた。
落ち着かせて帰ってきたはずなのに、気付かれてしまって両手を頬に当てる。
「私、そんなにわかりやすい……?」