二年四組の教室の前に着くと、先生がドアを開けた。
教室に行く途中にチャイムが鳴ったため、生徒は全員座っていた。


後から入ってくる私に、ほとんどの人が注目してくる。
私は一歩教室に入り、丁寧に振り返ってドアを閉める。


「おはようございます。今日からこのクラスに新しいメンバーが加わります」


先生に促されて、教卓の隣に立つ。
想像以上に教室全体を見渡せ、緊張が込み上げてくる。


私の話を聞こうと真剣な表情の人。
近くの人と小声で会話をしている人。
初めから私には興味がないのか、俯いている人。


いろいろな人がいて、私はなぜか安心した。


緊張を解すために、深呼吸をする。


「小野寺円香です。よろしくお願いします」


とても短い自己紹介になったけど、これ以外何を言えばいいのかわからなかった。
頭を下げていたら、小さな拍手の音が聞こえた。


そっと頭を上げ、今一度教室を見渡す。
興味無さそうにしていた人も、手を叩いてくれている。


「小野寺さんの席は窓際の一番後ろよ」


先生に言われて、机の間を通って指示された席まで歩いていく。
私が席に着いたことを確認した先生は、連絡事項を伝えると、教室を出ていった。