いじめてきた本人に言われても、反応に困る。


ひとしきり笑ったあと、笠木さんは何かを考えるよう、腕を組んだ。


「お嬢様、金曜の放課後は暇か?」
「……ええ」


なぜそんなことを聞かれたのかわからないまま答える。


「お嬢様が怒られることは避けたい。染めるとしたら、週末だけ」


それを聞いて、すぐに納得した。
私のことを考えてのことだったらしい。


笠木さんが私のことを考えてくれていると思うと、無駄に舞い上がる。


「何色がいいと思います?」


恥ずかしくて近寄れないとか思っていたのに、今度は自分から近付いてしまった。
笠木さんの顔が目の前にあり、慌てて下がる。


「ご、ごめんなさい……」


私らしくない行動の連続で、穴があったら入りたい気分だ。


「変わったな、お嬢様」


笠木さんは微笑んでいる。


「初めて見かけたときより、笑顔が自然だ」


言われてみると、そうかもしれない。
由実さんたちと話すときも、前ほどいろいろ考えていないような気がする。


「……笠木さんの、おかげですよ」
「俺の?まさか。お嬢様が自分から殻を破ったんだ。俺は何もしてない」
「そのきっかけを作ってくださったのは、笠木さんです」