ぎこちない話し方ではあったが、先生は一階にある職員室に案内してくれた。
そのまま私のクラス担任のところまで連れて来てくれた。


その先生にお礼を言い、担任の宮瀬先生に挨拶と、遅れてしまったことに対する謝罪をした。


「気にしないで。小野寺さんが無事でよかったわ」


今の今まで話していた男の先生はこの学校の教頭で、校長と教頭以外は私のことは知らない。


初めて、他人の素直な微笑みを見たような気がした。


「じゃあ、教室に行きましょう」


先に職員室を出た宮瀬先生の背中を追う。
階段を上り、渡り廊下を歩く。


そこは笠木さんと出会った場所の、上だった。
笠木さんが戻ってきていないかと、つい中庭を探してしまった。


遠くの方で風に揺れる金色の髪が目に入った。
自然と足が止まり、その後ろ姿を見つめる。


「小野寺さん?」


私がついて来ていないことに気付いたらしく、先生は振り向いて心配するような面持ちで言った。


先生から再び中庭に視線を戻したが、彼を見失ってしまった。
私は残念のような気分になり、足元を見つめる。


そのまま足を進めた。
先生のすぐ後ろに追いつくと、先生も歩き始めた。