東雲さんの言う通りで、いくつかのノートを貸してほしいと言おうとした。


「まあ、貸してって言われても、授業中寝てる私のノートなんて貸せないんだけどさ」


それよりも先に、東雲さんが笑い飛ばした。
私も坂野さんも拍子抜けし、苦笑する。


「もう、瑞希ったらどうしてそんなに」
「はいはい、不真面目でごめんなさいね。自分に正直なのよ」
「授業中に寝ることが?」
「勉強したくないっていうやつ」


坂野さんは顔を顰めた。
そんな二人のやり取りが微笑ましくて、思わず笑みがこぼれた。


すると、二人は私の顔を凝視した。


「小野寺さんが笑った……」


驚いているような、感激しているように見える。


「わ、私だって笑いますよ……?」
「なんていうか、心から笑ったって感じ?ずっと、笑ってはいるんだけど、作り物感があったんだよね」


自分に正直だと言っていた東雲さんが言うのだから、それだけ作り笑いをしていたのだろう。


無意識だった。


自分は変われないのだと気落ちしてしまう。
逃げたという自覚はあったが、環境が変われば少しずつ変われるのではないかと思っていたのに。


「えっと……私、悪いこと言った?」