私の頭の中には疑問符が増えるが、そんな私を見て、笠木さんは笑っている。


「えっと……私たちは外で話しますか」


希実さんが気まずそうに、お父様に提案した。


「そうしましょう」


お父様が賛成したことで、希実さんとお父様はそそくさと出ていってしまった。


ここに来て、見たことのないお父様ばかりを見ているような気がする。


「そんなにドア見つめてどうした?やっぱり帰りたいのか?」


笠木さんは少し残念そうに眉尻を下げている。


「いえ……私、全然お父様のことを知らなかったんだな、と……」


知らなかったと言っていいのだろうか。
知ろうとしなかったの間違いではないか。


お父様と衝突することはあったが、私のことを怒るのは私のためではないと思い込んでいた。


いつも会社のことしか考えていないのだと、勘違いしていた。


話してもどうせ聞いてくれない。
どうせ、頭ごなしに否定される。


そんなふうに思って、自分の思いを正直に伝えたことがなかった。


「知らなかったってわかったんなら、これから知っていけばいいよ」


笠木さんは穏やかに微笑んだ。


それでいいのだろうかと思ったが、不思議なことに、笠木さんに言われると問題ないように思えてくる。