その一言で、希実さんは固まってしまった。


笠木さんはその様子を横目で見る。


「そこで円香が父親に相談しようか?って提案してきた」


希実さんとお父様の視線が私に向く。


今思えば、随分自分勝手な話だ。
親の金で解決させようとしていたのだから、大馬鹿者だ。


「だけど、俺は友達の親の金で手術したいとは思わなかった」
「だから円香と結婚をすると決めたのか」


お父様は笠木さんを睨んでいる。


今の話だけでは、笠木さんがお金を目当てに私と結婚しようとしていることになってしまう。


私は否定しようとしたけど、笠木さんが手をかざして私を止めた。


「家族なら、金を出してもらうことに抵抗がないからだよ」


それは聞いたことのない、笠木さんの本音だった。
お金目当てだと言っているように聞こえ、胸が締め付けられる。


「それに、結婚するなら円香しかいないと思ってる。だから結婚を決めた」


優しい表情をした笠木さんと目が合う。
照れくさくて、つい目を逸らしてしまった。


笠木さんは、私が笠木さんの言葉に反応していたことに気付いていた。
だから、フォローするように私を見てきたのだろう。


「あと、借りた金は働いて返すつもりだから」