「小野寺さん、保健室に行ってたの?大丈夫?」
「は、はい」


彼女に嘘をつくことに抵抗があり、自分でもわかるくらい、下手な作り笑いをしてしまった。
そんな私の右頬に、誰かが指をあてた。


「慣れない環境に来たから、体調崩したんでしょ」


東雲さんだ。
私は頬に右手を当てる。


「そっか……あ、さっきの授業のノート見る?」


坂野さんが開いたままにしていたノートを閉じた。


「では、お借りしてもよろしいですか?」


そして笑いながら私のほうに差し出した。


「もちろん。なんだろう、小野寺さんの話し方、くせになりそう」
「わかる。なんかね」


私には理解できないことで、二人は顔を見合わせて笑っている。
私は戸惑いながら、坂野さんのノートを受け取る。


「あの……返すのは明日でも問題ありませんか?」
「うん、全然いいよ」


坂野さんはどうして私がそんな質問をするのかわからないのか、首を傾げながら許可してくれた。


「てか、英語だけで大丈夫?二学期とはいえ、続きからっていう授業もあるよ」


東雲さんのそれで、坂野さんはさっきの私の質問を理解したのか、納得したような顔をしている。