特に話したわけでもないのに、私が悩みを抱えているとわかった先生には、尊敬する。


私は受け取った紙を無駄に大切に持ち、お辞儀をして保健室を後にした。


しばらくして笠木さんと満足に話せなかったこと、先生に出してもらったお茶を飲まなかったことを後悔したが、戻ることも出来ずに後ろ髪を引かれる思いで教室に向かった。


後ろのドアを開けて入ると、その近くの生徒、先生が私に注目した。
なるべく音が出ないようにドアを閉め、教卓まで歩く。


その途中にノートを書き終えた、居眠りをしている生徒以外が私に視線を向けてくる。


「遅れてすみません。保健室に行っていました」


その言葉とともに、嘘の利用証明書を渡す。
先生が読んでいる時間は、バレてしまうのではないかと、心臓の音が大きくなっていく。


「大丈夫なの?」


それを受け取った先生は、心配の目をしている。


悪いことをしたと自覚はあるが、気付かれなかったことに安堵する。


「……はい」
「無理はしないでね」


それ以上は何も言われず、自分の席に戻った。
私が椅子に座ると、英語の授業が再開した。


授業が終わると、早速坂野さんが声をかけてくれた。